【海外就職】部下の叱り方ー部下のマネジメントー

ホタイブログ

「海外では、部下を叱ってはいけない」よく聞きますが、これは本当でしょうか?私の経験では、海外の職場でも部下を叱ることはあります。良いか・悪いか、といえば悪いのかもしれません。しかし、実際部下をマネージメントし、コントロールする場合に必要なこともあると言えるでしょう。では、どのように叱ったら良いのでしょうか。国によっても叱り方レベルが異なります、どのレベルまでは受け入れられるのか、その判断の方法も紹介します。

目次

本当に海外の職場ではマネジメントするために部下を叱らないのか?

「海外の職場」といっても、世界にはたくさんの国がありますので、これをひとくくりにすることは出来ません。しかし、私の経験では、中国、ベトナムなどの儒教圈では結構大声で怒鳴ったりするようです。やはり、儒教の家父長制の影響があるのでしょうか。
よく欧米では…などと言われますが、わたしの体験では、アメリカで怒鳴りはしないものの、詰めるような感じで叱られたことがありました。一つのワークグループがたるんだ感じとなり、数字が落ちた時に全体を締め直すという感じでした。
どこの国でも部下が思ったとおりに仕事を行ってくれないことがあり、プレッシャーをかけて指示を通さなければならないことがあり、叱る必要が出てくるのです。
叱るといっても、その方法はいくつもあり、大声で罵倒するというのはほとんどありません。また国によってだけでなく、その会社の社風によっても変わってくるので注意が必要です。
叱り方のレベルを誤ると、叱った部下がやめたり、逆恨みして仕返してくるだけではなく、他の社員にも影響し、離職率が高くなってしまったり、協力をえられなくなるなどの問題が発生します。

海外の職場での叱り方

国や文化によって叱るレベルや方法が異なります。まず現地で方法を知ることが大切です。
ではどのようにして知ることができるでしょうか。

現実を知る

一番確実な方法は、現地のマネージャーの行っている方法を観察することです。無論、その国の、その会社の、そのマネージャー個人のやり方なので、それをもって”その国の方法”と一般化することはできません。しかし、少なくともその会社で実際に行われている方法や、その叱っている人の評判を聞くことにより、どの程度の叱り方までが許容されるかが分かります。

現場を調べる

二番目は現地社員へのヒアリングです。現地の上級管理者や通訳に、単刀直入に尋ねることです。怒鳴っていいか?と聞けば当然駄目だと答えるので、現地の会社ではどんな叱り方をしているかを聞けば良いでしょう。
私はベトナムで、「前の会社の上司」は事務所に響き渡るように怒鳴っていた」などと聞くことが出来ました。この前の会社とは、外資系でなく、ベトナムの現地会社です。そして、できればその影響も聞いておきましょう。怒鳴られるので皆辞めてしまう、というのなら、怒鳴るのは避けようという答えになります。

他社を調べる

三番目としては、日本人の先輩諸氏に聞いてみることです。ただ気をつけなくてはいけないのは、本人は武勇伝風に「いやー、いつも事務所で怒鳴っているよ」などと言っても、実際はそんなことはなかったり、本当に怒鳴っていても事務所の雰囲気が悪く、離職率も高い、などの問題もあるかもしれませんので、あまり鵜呑みにはできません。あくまでも参考程度です。

海外職場での部下の叱り方

実際にどのような叱り方が行われているかを知ったら、基本的にはその方法に従うようにしましょう。今までの自分の国内でのやり方や、自分の性格を顧みて、このへんは注意しなければならないといったポイントを把握しておきましょう。
また、叱りレベルの最大値をつかんだからといって、むやみに最大レベルで叱ればよいということではありません。感情的に「怒る」のではなく、「叱る」ためにも、自分の叱りレベルを決めておき、どの場面でどのレベルを適用するかを決めておくと、冷静に対処出来ます。
叱り方レベルとは、下記のような例になります。

  1. 口頭で、その場での指摘
  2. 口頭で、別室での注意
  3. 口頭で、別室で、強い口調での叱責
  4. 口頭で、別室で、大声での叱責
  5. 他の人の門前で、大声での叱責

以上のような感じです。「口頭で」と書いたのは、後述しますが、本来であれば大声での叱責は必要なく、書面での注意書や警告書を発行し、人事記録に残すことにより、大声での叱責は必要ないためです。とは言うものの、実際には私自身も大声を出してしまうこともあります。
このようにレベルを決めておくことで、何か問題が発生した際には、「これはどのレベルだろう」と考えることで自身の心を落ち着け、過度な叱責をしてしまうことを避けることが出来ます。

注意していただきたいのは、あくまでも「叱る」のであって「怒る」のではありません。冷静に効果を考えて、「怒る」ふりをするのはありですが、感情にまかせて大声を出すのは良くありません。あくまでも、計算ずくで行動します。

なぜ日本人は怒るのか

人が怒る時は、物事が上手くいかなかった時です。そしてその理由は、部下が自分の意図してた通り業務を行っていなかったり、同じミスを繰り返したりしたことなどです。あるいは規則に違反していることもあるでしょう。

もともと、日本人は阿吽の呼吸で「空気を読む」ことを求められ、会社でも長らく終身雇用で同じ環境に長く勤めていました。その結果、指示・伝達をそこまで細かくしなくても大体伝わっていたのですが、海外では同じようには行きません。
また、日本の会社は、一生をともにする家族の延長のような環境でしたので、儒教的に年長者が絶対的で上司・先輩が部下・後輩を導く、というような背景もあります。しかし、日本でもそのような環境はなくなりつつあり、海外では当然環境が異なります。

業務を怠ったり、大きなミスをした時、規則違反のあった時には、会社の制度としてマイナスの評価を下されます。例えば、遅刻を繰り返すと、始めは口頭注意、注意書などが発行され、それが全て評価に直結するはずです。
しかし、「怒る」人は意外にこの評価をきっちりと行っていません。本来であれば評価のために記録される落ち度を「怒る」ことで免除するのです。つまり本人は「怒る」ことで正式な記録に残ることを「避けてやっている」という考えが無意識にあったりします。怒っている人に、「そんなに怒ることならば、人事部に報告して注意書を発行したら?」と提案しても「いや、そこまでは…」と答えるのです。

会社として評価制度や規則があるのならば、その制度を使うべきで、各個人が自分の感覚で処置してはいけないのですが、自分では温情をかけているつもりで、結果的に会社の制度を無視し、職場環境を悪くしていることを理解すべきです。
また、仕事に対して真剣さを伝えるために怒っているのかもしれません。職人魂のようなものと捉えると、弟子を叱る師匠と考えると納得しやすいでしょう。

海外職場でのマネジメント

海外では、以心伝心、職人魂などは通用しません。怒りを「温情」と捉える人もいません。
冷静に評価するのが一番です。

まず会社の評価制度や罰則規定を確認し、その通りに実行しましょう。業務評価であれば、目標への達成率やミスへのマイナス評価等全て記録し、怒る代わりに本人の確認を取っておきましょう。この「事実の記録の確認」を対面で上司に行われるのは、怒られるよりもかなり効きます。そして、定期的な評価の時期に再度確認して下さい。怒って「評価を下げるぞ」ではありません。実際に評価を下げるのです。これが逆に、ミスをしていない人への公平な処置となります。怒っただけで評価を下げなければ、ミスをしなかった人と同じ評価になり、不公平になってしまうのです。
規則違反については、書面での注意・警告等で、複数回重なれば解雇ともなります。これも会社規定通りに運用するべきです。同じ違反をしても、上司によって処罰が異なっては規定の意味がありません。

感情的に物事に対応するのではなく、冷静にルール通りに対処するのが大切です。ルール通りに対処するということは、上司としての権限を行使するということであり、組織での上下関係をはっきりさせることにもなります。上司は責任と権限を持ち、その権限内で部下を管理します。上司は父親ではありません、組織人として割り切った対応をしましょう。怒るよりも冷静に評価される方が怖いものです。

叱りのテクニック

叱る時には、なるべく公平に叱るのがあるべき姿でしょう。しかし、あえて公平にしない方が良い場合もあります。
例えば、一つのミスで、部下と係長を叱らなければならない場合があったとします。別室に二人を呼び、部下の方を重点的に叱り、係長はその責任を負っている形とします。その後、部下を退室させ、係長と二人になってから今度は係長を集中的に叱るのです。いわば係長のメンツを立ててやるのです。部下の前だから言わなかったが…..」と言えば、自分の体面を立ててくれたことを理解し、受け入れやすくなるのです。

まとめ

海外の職場で働く際に、誰しもどのようにして部下を叱るのか不安になることでしょう。
まず、その国の叱り方を知って下さい。現地の現状や、管理者へのヒアリングで大体つかめます。
その次に自分なりの叱りレベルを作り、毎回問題が発生した時に、どのレベルに当てはまるかを考え、冷静に対処しましょう。
また、怒るのではなく、会社の評価制度や規則に沿って対応してください。それならその国のやり方から外れることもありません。
また、叱る時には、相手の立場や体面を考慮してやると受け入れやすくなります。
同時に、評価記録に残していきましょう。評価記録に残すということは、怒るよりも効果がありますし、その他のメンバーに対しても公平性を保て、評価の透明性が上がります。
冷静に叱ることで、部下の管理もしやすく、人間関係も良い職場環境を作れることでしょう。

補足

通常の業務では、99%はミスの指摘や注意で相手は理解します。しかし、ごく稀に
「箸にも棒にもかからない」社員がいたりします。
私の経験では、数年に一度くらいで、こういった人がマネージャーとして入ってきます。外見は普通で、英語もでき、片言の日本語を喋ったりします。そのため、面接ではなかなか見抜けないのです。ですが、宇宙人のように仕事ができず、なぜできないのかも理解できないレベルの人がいるのです。
流石に試用期間中には、おかしいな、というのが分かります。ただ、日系企業の良いところでも悪いところでもありますが、現地社長が、「せっかく入社したのだから、上手く教育してくれ。」などと言って本採用になってしまうのです。そこから先はお互いに地獄となります。
これから海外に行く方や、今海外にいる方も、こういった人がいるということを覚えておいてほしいです。「いるだけで邪魔になる人」というのが存在し、こういった人はなるべく早く切ったほうが良いのです。

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