【長期視点】海外移住に失敗する3つの理由、ライフステージの変化から考える

ホタイブログ

筆者は、海外に住んで20年になりますが、その間に多くの人が日本に帰国するのを見てきました。移住して数年たち、生活が安定しているにもかかわらず諦めて帰国してしまうのです。
独身で海外に移住をしても、その後に結婚・子育てなどの壁に直面します。その頃には親も介護が必要になったりと、さまざまな状況が変わっていきます。
この記事では、文化が合わない・お金が続かないといったことではなく、そういった問題をクリアしてもライフステージの変化によって帰国せざるをえない理由を説明し、どのように計画すべきかを紹介します。

人生の大きな転機として、結婚、子供の教育、親の介護が挙げられます。日本にいても、海外にいてもこれらを契機に生活が大きく変わります。

海外に移住する時期は人それぞれですので、まずライフステージの第一歩が独身であるところから、ライフステージの変化による問題を説明します。また、それらに対する考え方も示していきます。
この記事を読むことにより、海外に移住した後、どのような問題に直面するか、そしてどのように準備をしておくべきかがわかります。

目次

海外移住の挫折1.結婚

独身で暮らしていれば、「結婚」というものが視野に入ってくるのは自然なことです。もちろん生涯独身を貫く人もいますし、その場合は、この話の対象外となります。

海外で結婚を考える際は当然結婚相手がいるわけですが、海外に住んでいると外国人である可能性が高くなります。なにせ周りにいる人の数は外国人が圧倒的に多いのですから。
その中から自分の相性に合い、かつ相手からも選んでもらえるのは現地の人であることが多いのです。
そうすると当然「国際結婚」になります。最近では国際結婚もかなり増えてきていますが、まだまだ否定的な見方をする人も多いです。
反対する人が自分の両親や家族・親族である場合、結婚は難しくなります。また、国際結婚には賛成でも、結婚後に住む場所が日本ではないことを心配をする親御さんもいることでしょう。

こうしたことが原因で、結婚するチャンスを逃してしまったり、外国人との結婚そのものを諦めてしまうことがあります。
すると、このままこの国にいても結婚し、家庭を持つことができないとの結論となり、日本に帰国することになるのです。

こういった事情は、結婚相手も同様で、特に「住む場所」は重要です。日本人はとかく日本は素晴らしい国で、誰もが住みたがっていると思いがちです。
日本が素晴らしい国であることは否定しませんが、自分自身や子供が、家族・友人もいない、言葉も通じないところに行くことをためらったり、心配し、結婚し日本へ行くことに反対する人も多いのです。

国際結婚にむけて

まず、自分自身の指針を持つことが重要です。自分はどうしたいのか。絶対に日本に帰りたくないのか、その国にいたいのか、あるいは帰国も選択肢に入っているのか。
どちらでもよいのなら、相手の希望に沿うことができます。双方の希望が異なり、お互いに譲歩できないのなら、残念ながら縁がなかったということで、早めに結果を出すことが双方にとって良い選択になるでしょう。
相手側は、外国に住むことなどは考えたこともない、ということもあるので、早めの方が良いとはいうものの、性急にではなく、じっくりと将来の話をして考え方のすり合わせをしるのが良いでしょう。

海外移住の挫折2.子供の教育①ー子供の言語

国際結婚をすると、子供の言葉については結構軽く考えがちで、「将来バイリンガルになる、すばらしい!」と簡単に思いがちです。
しかし、現実はとても重く、難しい問題です。大人は、バイリンガルや外国語の習得を「スキル」の目で捉えがちです。就職に役立つ、とか他の国でも通用するなどです。

子供にとっての言語習得は「スキル」ではありません。 人間は言葉で物事を考えるのです。子供が言語を習得するということはすなわちものの捉え方を習得しているのです。
例えば、犬がいたとして、日本語では「犬」がいると捉えますが、英語では「一匹の犬」か「複数の犬」と捉えます。そしてその考えの上にさらに複雑な抽象的なものを重ねてものを考えるのです。
この抽象的な言語の習得は幼少期から小学校で習得します。この時期に同時に二つの言語を同レベルで習得したり、途中で入れ替えたりするのは非常に難しく、下手をすると子供の学習能力に大きなマイナス要因となります。

「子供だから学習は早いだろう」という安易な考えで小学校の言語を途中で変えると、子供に大きな負担を与えてしまう可能性があります。適切な準備と覚悟がなければ、これは絶対に避けて欲しいと思います。
小学校での教育言語を変えないとすると、小学校入学時にすでに高校や大学もある程度決めてしまわなければなりません。
そんなに早く、と思われますが、逆算するとそうせざるを得ません。日本の大学入試を突破するには、日本の高校をでなければ難しいでしょうし、日本の高校入試に合格するには日本の中学から挑戦するのが一番なのです。

日本語での学習は、海外の日本人学校でも途中までは可能ですが、日本人学校はだいたい中学までで、日本の高校も海外にありますが、非常に限られていて少ないです。中学・高校まで外国語の学習を受け、それから日本の大学受験を突破するのは非常に難しいです。
では、日本の大学ではなく、現地や英語圏の大学とするとどうでしょう。
これも日本の大学と同じで、現地の大学であれば現地の言葉で入試を突破しなければならず、英語の大学であれば英語で入試に臨まなければなりません。つまり小学校のの時点で、ある程度大學までの道のりを決めてしまわなければならないのです。
子供の言語や教育については、今後別に記事にしていきますので、ここまでとしておきます。

「日本語での学校教育」を選んだ場合には、子供を日本人学校に通わせるか日本帰国が選択肢になります。日本人学校を選んでも、高校からは子供だけを日本に返す(全寮制の高校や、親族に預ける)か、一家で日本帰国するという選択肢しかありません。
帰国子女枠もありますが、大学により、様々な条件がありますので、その条件を確認する必要がありますが、狭き門のようです。条件に合致するようであれば、挑戦するのも一つの手段です。

子供の学習言語方針を決める

言葉の方針を決める。これが第一歩です。
例えば、方針として両親双方の言語を子供が流暢に読み書きできる、ということを決めます。子供のアイデンティティを確立するために、また将来どちらの国に住むこともできるようにということを目標にします。または、「日本人」として、日本語を最優先に学習する、という方針もあります。

言語方針は、各家庭でそれぞれの考え方に基づいて決めるものです。ある中国人とベトナム人のカップルは、中国語教育を諦め、ベトナム語と英語に決めています。個人的に、中国語を学ばないのははもったいないことだと思いますが、それも一つの方針です。そして、それに沿って彼らの子供はインターナショナル・スクールに通っています。あくまで途中でブレないということが重要で、最後まで一つの方針に従うことが肝要です。
方針さえ決まれば、あとはそれに従って学校や将来の方向を決めていくだけです。

海外移住の挫折2.子供の教育②ー教育費

子供の学校教育に日本語を選択し、日本人学校に通う場合、特に二人目の子供から教育費が問題になります。家族帯同で日本から派遣された駐在員であれば、子供の教育費は会社負担になりますが、現地で採用された場合には、通常教育費の補助はありません。
アジア主要都市での日本人学校(小学部)の学費を見てみましょう。

都市 学費・その他(月) 備考
北京 約40,000円
ハノイ 約62,000円 スクールバス費を含む
バンコク 約42,000
シンガポール 約57,000円 施設費を含む
クアラルンプール 約39,000円 スクールバス費を含む
ジャカルタ 約36,000円 施設費を含む

2021年4月調べ。金額は為替レートや児童数、物価により変動します。
入学金等の一時金は含まれません。正確な学費は各学校にお問い合わせください。

このように、子供一人で月に約4万円程度かそれ以上かかります。二人目の子供が就学年齢になると、この負担が急激に高くなり、ハノイであれば二人で12万4千円もかかることになります。最近ベトナムへの移住といった話題もよく聞きますが、なかなか厳しい状況ですね。ハノイでインターナショナル校に通うとさらに倍以上の金額になります。

海外移住のメリットの一つは物価が安いことですが、全てが安くつくわけではありません。子供の医療費は、日本では多くの自治体で無料ですが、当然海外ではそういう訳には行きません。食費も海外の方が相当安くなりそうですが、日本で輸入食材の安全性に疑問がもたれるように、海外でも安心・安全な食材は割高になります。それに日本食の食材は大都市であれば大体購入できますが、これも割高です。

この状況になると、日本に帰国して子供を公立校に入れたほうが安くなるという計算になるのです。あるいはシンプルに二人目の子供の教育費を払えなくなってしまうのです。さらに上述した「高校以後」の問題を考えて、長子の中学・高校進学と第二子の就学時期を見計らって日本へ帰国するという決定になることも多いのです。

早めに計画をたてる

日本においても子供の教育費は大きな負担になりますが、両親の収入によるところも大きいので一概にどうするか結論を下すことはできません。
収入と支出のバランスとなりますので、収入を増やすために起業をしたり、スペシャリストとして給与を増やしていくのか、あるいは子供の数を自分の収入に応じた数に抑えるのか。または日本語学習は学外で読み書きのみに集中して、学校は現地校に通うのか。
いずれやってくるこの状況を把握し、子供が就学年齢に達する前に言語方針を決めることが必要です。

海外移住の挫折3.親の介護

以前留学していた頃に、ある友人がいました。彼も現地での就職を希望していましたが、兄弟がいなかったため、結局現地での就職をあきらめ日本へ帰国することとなりました。

家庭状況によっては、そもそも海外移住ができないのです。移住したとしても親が健在なうちはあまり考えることはないのですが、親の体が弱ってくるとどうしてもサポートが必要になります。その年齢では環境の全く違う海外へ呼び寄せることもできず、やむを得ず帰国することになることもあります。親も「老後は海外移住」と考えているようであれば問題はありませんが、なかなかそううまくもいかないものです。

海外へ行く前に

海外へ移住する前に、親・兄弟と老後の問題をよく話し合っておきましょう。場合によっては、親が何歳くらいまでと時限を切って、帰国を前提とした移住になるかもしれません。
この問題は、日本にいても親が遠い田舎に住んでいたりすれば同様に発生する問題でもあります。日本でも海外でもなかなか根本的な解決策がないのが現状です。
どんどん世界が発展し、海外が近くなったと言われますが、まだまだ遠いです。若いうちには思いもしませんが、海外に長くいると最終的に親の死に目に会えないというようなこともあり得ます。やはりそれなりの覚悟はしておくべきでしょう。

まとめ

海外への移住はタイムレンジが長くなります。ライフステージも変わっていきますので、その時々の変化に慌てないためにも、事前にどんなことが起こりえるのかを知っておくことは大切です。
結婚・子供の教育・親の介護は長い目でみて多くの人が直面する問題です。そして生活様式が大きく変化します。そのためにも、自分はどうしたいのかを早めに決めておくことが後悔しない方法だと思います。

この記事のタイトルには「海外移住の失敗」と書きましたが、「移住」は「永住」ではありません。その時々で必要な決定をし、それが日本帰国であっても「移住」はうまく行かなかったかもしれませんが、人生の失敗ではありません。逆に人生に必要な転換点でもあるのです。このグローバル時代において、数年でも海外で住んだという経験は一つのキャリアになるものですし、移住が永住ではないように、将来再び海外に出ないことが決まった訳ではありません。むしろ海外にいた経験が将来の海外駐在につながるようなこともあるかもしれません。
そのためには、移住しておわり、ではなく、移住してからどのように有効に時間を過ごしていくかが将来への次のステップつながっていきます。

これから海外への移住をする方は、まだ将来は確定できないということを理解して欲しいと思います。「日本はオワコンだ」「これからは海外だ」などと吹聴すると、後で困ってしまうかもしれません。周囲には「海外で数年キャリアを積んでくる、あるいはもっと長くなるかもしれない。」くらいの伝え方で良いのではないかと思います。
もちろんどのような決意を胸に秘めるかはあなた次第です。

——ホタイブログ—–

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